透析患者さんが心房細動を持つ割合は世界的に5.6〜27%(日本人透析患者さんでは5.6〜9%)と報告されており1-3、一般平均4と比較して高いことがわかります。またその割合は、高齢になればなるほど、また透析期間が長くなるほど高くなることが明らかにされています2, 3。
透析によって体内の水分が除水され、水分量や電解質の量が変化することにより、交感神経が活性化され、不整脈が起こりやすくなります5。
透析が必要な慢性腎臓病の患者さんは、高血圧、糖尿病などの病気にも罹患していることが多く、心臓の壁が厚くなっていたり(心肥大)、あるいは心臓が収縮する力が落ちることでも、心機能が低下し血液が体内に上手く循環できない状態(心不全)となり、心房細動が起こりやすくなります。そのほか、動脈硬化により血流が低下している方や、心臓にある弁がうまく働かなくなる病気(弁膜症)をもつ透析患者さんでも、心房細動が起こりやすいといわれています。
透析患者さんは、体内の水分量の変化によって心房細動が起きやすくなります。むくみがひどい、体重増加が目立つ、横になったときに息苦しい、普段より血圧が高いといった症状が現れたときは、早めに担当医師に相談しましょう*。また、通常不要なカリウムは尿と一緒に排泄されますが、腎臓の機能が悪いと体内に溜まりやすくなります。心房細動発症原因のひとつであるカリウムの過剰摂取を予防するため、カリウムを多く含む食品には注意が必要です。
*透析間隔が2日以上空くと体重が増加しやすくなるといわれています6。
透析中以外に、日常生活において動悸や脈の乱れを感じたら、手首に指をあてて脈拍を確認しましょう。最近は、家庭血圧計でも脈拍を測定できます。正常でない脈拍が続けて出る場合には、心房細動などの不整脈の疑いがある可能性があるため、必ず担当医師に相談しましょう。
心房細動の治療では、脳梗塞の予防として、通常は抗凝固薬と呼ばれる経口薬を服用しますが、「血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドライン」において、透析患者さんへのワルファリンの使用は原則禁忌とされています5。抗凝固薬は腎機能の悪い患者さんや透析患者さんへの使用に制限があるほか、副作用として出血が起こりやすいことが知られているため、担当医師の慎重な判断によって治療法が選択されます。最近では、心臓にある「左心耳」と呼ばれる部位を切除することで、血栓をできにくくする治療も行われています。
気になることがありましたら、必ず担当医師にご相談ください。
1 Wizemann V et al. Kidney Int. 2010; 77: 1098-1106.
2 藤井秀毅ほか. 日本透析医学会雑誌. 2007; 40: 165-175.
3 Genovesi S et al. Am J Kidney Dis. 2006; 46: 897-902.
4 Inoue, H et al. Int J Cardiol. 2009; 137(2): 102-107.
5 日本透析医学会「血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドライン」透析会誌 2011; 44(5): 337-425.
6 日本透析医学会「維持血液透析ガイドライン:血液透析処方」透析会誌 2013; 46(7): 587-623.
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