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高齢患者さんの心房細動治療

「世界で最も高い高齢化率」1と言われる日本では、80歳以上の心房細動患者さんが今後ますます増加すると予想されています。年齢が上がるほど心房細動による脳梗塞リスクは高まるため、抗凝固療法、とくにDOAC(直接経口抗凝固薬)による脳梗塞予防が非常に重要です2。一方で、抗凝固薬には出血性副作用のリスクがあり、とくに高齢の患者さんは出血リスクも高くなるため、慎重に判断しながら治療を進める必要があります2, 3

高齢患者さんの心房細動患者さんが抱えやすい様々な課題

脳梗塞予防では、従来のCHADS2(チャッズ・ツー)スコアや、日本人の特性に合わせたHELT-E2S2(ヘルツ・イーツーエスツー)スコアを参考にすることが推奨されています。年齢に加えて、体格(低体重・やせ型)なども脳梗塞発症のリスク因子と考えられています。通常、これらの指標に沿ってDOACを選択的に使用しながら、血圧コントロール、併用薬の種類と数、併発疾患や既往疾患(肝臓・腎臓の機能など)などを総合的に考慮して心房細動の治療を進めます2, 3。例えば、成人の心房細動患者さんに対して通常1日1回60mgまたは減量基準で30mgの用量で処方されるDOACにおいては5,注1)、高齢患者さんでは年齢(80歳以上)や腎臓の働き、出血の既往など注2)を踏まえて1日1回15mgと少なめに調整するなど、出血リスクと脳梗塞予防のバランスを考慮した治療が検討されます4

  • 注1) DOACは4種類あり、それぞれで用法・用量が異なります。どのDOACを処方するかは、患者さんの背景などを考慮して担当医師が判断します。また、添付文書に記載されている用量調整基準(年齢、体重、腎機能)に従い、各DOACの用量が決定されます。
  • 注2) 体重が45kg以下、過去に頭部や消化器官で出血したことがある、腎機能低下がある、痛み止めや抗血小板薬を連日使用している場合、などを考慮します。詳細は担当医師にご相談下さい。
脳梗塞発症の危険因子 点数
H

Hypertension

高血圧

1
E

Elderly, age 75-84 years

年齢 75~84歳

1
L

Low BMI (< 18.5 kg/m²)

BMI 18.5未満

1
T

Type of AF
(persistent
/permanent)

持続性/永続性心房細動

1
E₂

Extreme elderly, age ≧ 85 years

年齢 85歳以上

2
S₂

previous Stroke

脳卒中既往

2

近年では薬での治療だけでなく、心房細動の再発を抑えるカテーテルアブレーション治療の技術も大きく進歩しています。最新の診療ガイドラインでは、繰り返し症状のある発作性心房細動患者さんでは、カテーテルアブレーションが治療の第一選択とされています3。とくに発症早期の心房細動に対し、高い有効性が示されています。これまでは熱エネルギー(高周波)や冷凍エネルギーで治療していましたが、最近は新しいパルスフィールドエネルギーが登場するなど、年齢に関わらず、より安全で効果的な治療を目指して改良が続けられています3。なお、患者さんの状態によってカテーテルアブレーション治療が適応にならないこともありますので、治療は担当医師と相談しながら進めましょう。

心房細動は年齢に関わらず、発症早期に治療を開始することで、正常な心拍リズムの維持や心不全、脳梗塞などの合併症予防が期待できます。高齢の患者さんの場合は、できるだけ服用薬の数を減らし、身体への負担を軽減する治療方法を検討しましょう2,3。「年齢を理由にあきらめない」ことが大切です。気になることがあれば担当医師にご相談ください。

1. 内閣府『令和7年版高齢社会白書』
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2025/zenbun/07pdf_index.html

2. Okumura K, et al. JACC Adv. 2025;4(6):101757.
https://www.jacc.org/doi/abs/10.1016/j.jacadv.2025.101757

3. 2024年JCS/JHRS ガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療
(日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同ガイドライン)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2024/03/JCS2024_Iwasaki.pdf

4. Okumura K, et al. N Engl J Med. 2020;383:1735–1745.
https://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa2012883

5. Giugliano RP, et al. N Engl J Med. 2013;369:2093-104.
https://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa1310907

奥村 謙 先生

監修:
社会福祉法人 恩賜財団 済生会熊本病院
循環器内科 不整脈先端治療部門 最高技術顧問

奥村 謙 先生

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