心房細動に対する薬物療法
心房細動に対する薬物療法では、抗不整脈薬という薬が用いられます。抗不整脈薬の作用は「リズムコントロール」と「レートコントロール」の2つに大別されます。
リズムコントロールは、心房筋に作用して異常な興奮を抑え、拍動を正常に戻すことを目的としています。
レートコントロールは、心室に伝わる電気信号を減らして、心拍数を抑えることで症状を和らげる作用があります。
心房細動では、心房内の血液の流れが滞ることで血のかたまり(血栓)ができやすくなります。また、血栓が脳の血管を詰まらせることで重篤な脳梗塞を引き起こす可能性があります。
これを防ぐために抗凝固薬という薬が処方されることがあります。
心房細動と診断されたら、まずは血栓の予防を考慮することがとても重要です。
抗凝固療法の方針を決めるために、脳梗塞になる危険度を表したCHADS2(チャッズ・ツー)スコアという指標が長年用いられてきました。CHADS2は、心不全・高血圧・年齢・糖尿病・脳梗塞の頭文字を表したもので、点数が高い人ほど、脳梗塞が起こりやすいと言われています。
Congestive heart failure / LVdysfunction
心不全、左室機能不全
Hypertension
高血圧
Age ≧ 75y
75歳以上
Diabetes mellitus
糖尿病
Stroke/TIA(一過性脳虚血発作)
脳梗塞、TIAの既往
また近年では、HELT-E2S2(ヘルツ・イーツーエスツー)スコアという新しい指標が導入されました。CHADS2スコアが海外で開発されたリスクスコアであるのに対して、HELT-E2S2スコアは日本人の特性に合わせて独自に開発された指標です。
HELT-E2S2は、高血圧・年齢(75~84歳)・BMI・心房細動のタイプ・年齢(85歳以上)・脳卒中の頭文字を表したものです。CHADS2スコア同様に、点数が高い人ほど、脳梗塞が起こりやすいと言われています。
Hypertension
高血圧
Elderly, age 75-84 years
年齢 75~84歳
Low BMI (< 18.5 kg/m²)
BMI 18.5未満
Type of AF (persistent/permanent)
持続性/永続性心房細動
Extreme elderly, age ≧ 85 years
年齢 85歳以上
previous Stroke
脳卒中既往
これまで抗凝固療法には、長い間、ビタミンK拮抗薬(ワルファリン)という薬が広く使われてきましたが、最近ではNOAC(ノアック)もしくはDOAC(ドアック)と呼ばれる抗凝固薬が広まってきています。NOACもしくはDOACは、日本では2011年に発売されました。これまでの薬と違い、食事制限をする必要がなく、脳出血のような副作用が少ないという利点がある一方、値段が高いなどのデメリットもあります。