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カテーテルアブレーション治療のおはなし

心房細動治療のひとつであるカテーテルアブレーション治療について理解しましょう

心房細動治療を受けるまでの流れ

心房細動の治療には、生活習慣を見直し、患者さんの持つ他の疾患を適切に治療することが大切です。

1. 生活習慣の見直し、リスク因子の管理、基礎疾患の治療

まずは食事や運動、喫煙習慣や睡眠などの生活習慣を見直し、血糖値や血圧値をしっかりコントロールします。
心房細動の発症および再発リスクを低減するためには、高血圧・糖尿病・睡眠時呼吸障害などの併存疾患の治療、および肥満・喫煙・過度の飲酒などの生活習慣の改善が大切だといわれています。
(2024 年JCS/JHRS ガイドラインフォーカスアップデート版不整脈治療)

食事の改善
運動の改善

2. 脳梗塞の予防(抗凝固療法)

脳梗塞の原因となる血栓ができるのを防ぐため、患者さんの病態や脳梗塞リスクに合わせて抗凝固療法を行います。
抗凝固療法の方針を決めるためには、脳梗塞になる危険度を表したCHADS2(チャッズ・ツー)スコアや、HELT-E2S2(ヘルツ・イーツーエスツー)スコアが用いられます。
従来の抗凝固薬には食事制限がありましたが、近年広まった抗凝固薬には、食事制限が不要なものもあります。

抗凝固療法

3. 心房細動の治療(薬物療法、カテーテルアブレーション)

治療方針は、患者さんの持つ他の疾患や年齢などを考慮して、患者さんのご意向をふまえて決定されます。気になることは、必ず担当医師にご相談ください。
心房細動の治療については、次のパートでお話しします。

心房細動の治療

心房細動の治療

心房細動の治療には、心房細動を受け入れてうまく付き合っていく方法(レートコントロール)と、心房細動そのものを取り除く方法(リズムコントロール)があり、それぞれに薬物療法と非薬物療法があります。
レートコントロールでは、主に薬物療法がおこなわれます。心房細動が生じたままのため、抗凝固薬の服用を継続しながら、心房から心室に伝わる電気信号を減らして心拍数を正常に近づけます。
リズムコントロールでは、これまで主に心房細動の発作を抑制する抗不整脈薬による薬物療法がおこなわれていました。しかし、完全な抑制が困難なことが多く、抗不整脈薬により徐脈や他の不整脈を引き起こす副作用も多いことから、近年では心房細動の根治を目指す治療として、カテーテルアブレーションが選択されることもあります。
また、近年の研究では、薬物治療ではなくカテーテルアブレーションを第一選択治療として行うことによる予後の改善とQOL(Quality of Life:生活の質)の回復効果が報告されています。(Wazni M et al. N Engl J Med. 2021 Jan 28;384(4):316-324. doi: 10.1056/NEJMoa2029554.)
ここでは、心房細動治療の中でも「カテーテルアブレーション」について、お話しします。

心房細動の治療の図解

カテーテルアブレーション治療

カテーテルアブレーションとは、カテーテルという細い管を足の付け根にある血管(大腿静脈)を通じて心臓に入れ、不整脈の原因となる異常な電気信号の流れを遮断する治療法です。薬物療法が不整脈の症状を抑えることを目的とした治療法であるのに対して、カテーテルアブレーションは不整脈の根治を目指す治療法です。心臓に管を入れるといっても、カテーテルを入れる部位に数ミリほどの小さな傷がつく程度のため、胸を切り開く必要がなく、患者さんの身体への負担は少ないとされています。

カテーテルアブレーションの種類

過去の研究から、心房細動の原因となる異常な電気信号は、左心房につながる4本の肺静脈から発生することが大半であると明らかになっています。(Haïssaguerre, M et al. N Engl J Med. 1998; 339(10):659-666.)そのため、まずは肺静脈からの電気信号を遮断するためのアブレーションが検討されます。この術式のことを、肺静脈隔離術と呼びます。肺静脈隔離術には、4本の肺静脈をそれぞれ1本ずつ隔離する個別隔離と、複数本の肺静脈をまとめて隔離する拡大肺静脈隔離の方法があります。

アブレーションを行う場所

カテーテルアブレーションを検討する際の注意点

長期間心房細動が続いている場合や左心房が大きくなっているなど、患者さんの状態によってカテーテルアブレーション治療が適応にならないことがあります。
気になる点は、必ず担当医師に相談してください。

カテーテルアブレーションの種類

カテーテルアブレーションには、カテーテル先端の材質や形状、あるいは使用するエネルギー源の違いによって、いくつか種類があります。また、その種類によって、治療できる不整脈や治療を実施できる医療機関が異なります。

  • 1. 先端の材質や形状の違い

    カテーテル先端に金属の電極がついている電極カテーテルと、ちいさな風船(バルーン)がついているバルーンカテーテルがあります。電極カテーテルには形状が複数あり、ストレート型のものやリング型のものなどがあります。

    電極カテーテル
    電極カテーテル 電極カテーテル
    バルーンカテーテル
    バルーンカテーテル
  • 2. 使用されるエネルギー源の違い

    主なエネルギー源とその作用として、以下の3点があげられます。

    • 高周波電流によって発生した熱エネルギーでやけどを作る方法:

      カテーテル電極から高周波電流を流して、組織中に熱を発生させます。この熱によって心筋組織にやけどを作ることで、異常な電気信号の流れを遮断する方法です。

    • 冷却剤による冷凍エネルギーで低温やけど(凍傷)を作る方法:

      主にバルーン型のカテーテルに冷却材を注入し、冷却されたバルーンを組織に押し当てることで、組織中の熱を奪います。これにより、心筋組織に低温やけどを作ることで、異常な電気信号の流れを遮断する方法です。

    • パルス電圧によるパルスフィールドエネルギーで細胞を働かなくする方法:

      心臓の細胞に対してやけどを作って電気信号を遮断する従来の方法と異なり、熱によらない治療法です。
      カテーテル電極にパルス電圧という瞬間的な高電圧をかけて、電極周囲に電場(パルスフィールド)を形成します。このパルスフィールドに組織がさらされると、組織膜に恒久的な孔が形成されて細胞が働かなくなり、異常な電気信号の流れが遮断されます。

      治療対象である心臓の細胞はパルスフィールドの影響を受ける閾値が低いことを利用して、心臓の治療対象部位を選択的に治療できると言われています。(Andrade JG et al. N Engl J Med. 2021;384(4):305-315.)

カテーテルアブレーションの利点とリスク

  • 利点

    カテーテルアブレーションは不整脈の根治を目指す治療法です。外科手術と比較して低侵襲であるため身体への負担が少なく、多くの場合、動悸・息切れ・疲労などの不快な症状が緩和・消失します。その結果、生活の質(QOL)が改善され、薬物治療が不要になる場合もあります。ただし患者さんによっては、複数回のカテーテルアブレーションが必要になることもあります。

  • リスク

    すべての手術にリスクがあるように、カテーテルアブレーションにも合併症のリスクが存在します。また、カテーテルの種類によって効果や発生しやすい合併症がそれぞれ異なります。代表的なものとして、脳卒中、心タンポナーデ、肺静脈狭窄・閉塞、横隔神経麻痺、空気塞栓症、鼠径部の血管損傷などがあります。また、カテーテルの穿刺に起因する刺激感、感染症、出血が発生することもあります。そして、大変稀ですが特に重大な合併症として、左房食道瘻があります。

    ご自身に該当する利点とリスク、懸念や質問は、担当医師へ必ずご相談ください。カテーテルアブレーションでは利点を得られる患者さんが大半ですが、全員が必ず同じ結果を得られるわけではありません。

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